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沖縄の伝統・文化・歴史

先祖崇拝の沖縄にどうやって仏教は伝わったのか?

投稿日:2022年6月5日 更新日:

仏教

沖縄といえば昔からご先祖様を大切にする「先祖崇拝」が主流。そんな沖縄に今はものすごい数のお坊さんがいます。先祖崇拝の沖縄に仏教はどうやって伝わって現在のようになったのか、その歴史を紐解いていきます。

実は琉球王朝時代には仏教が伝わっていた

沖縄出身の人に「あなたはどんな宗教を信じていますか?」と聞くと、ほとんどの人が「先祖崇拝」と答えます。

確かに沖縄ではご先祖様の供養に関する行事はどの家庭でもとても大切にされています。仏壇は存在しますが、「仏壇」とは言いつつも仏教の仏壇とは全く違います。

なにしろご本尊の代わりに先祖代々の位牌(トートーメー)が中央に飾られていますし、仏具も全く違います。

そんな沖縄ですから「仏教とは縁がない」と答える人はとても多いです。でも「沖縄に仏教は伝わらなかった」という話は少し違います。

何しろ琉球王朝時代にはすでに沖縄には仏教が伝わっており、お寺だって立派なものがたくさん建てられていたのです。

歴史に残っている琉球で最も古いお寺は、13世紀の半ばに現在の浦添市に建てられた極楽寺といいます。

極楽寺は「浦添ようどれ」と呼ばれる琉球の王様の王廟にあり、極楽寺が建てられたのも浦添ようどれと関係の深い英祖王の時代といわれています。

14世紀半ばになると臨済宗と真言宗が伝わり、当時の琉球国王によって数々のお寺が建てられました。

その後16世紀になって袋中上人が琉球に滞在したことによって浄土宗が伝わりますが、4年間だけ琉球に滞在しその後帰京してしまったため結果としてほとんど庶民に伝わることがありませんでした。そのため琉球の仏教は真言宗と臨済宗ほとんどでした。

ただ琉球に伝わった仏教はあくまでも王廟のために存在していたので、信じる人も王家や一部の特権階級のみでした。

ただ「時の権力者のための宗教」でしたから、当時の琉球のお寺は「官寺」とされ所属するお坊さんも現代にいいかえれば国家公務員のような扱いでした。

何しろ当時のお坊さんは国から報酬が支払われていましたし、寺を建てるにしても国家プロジェクトですから費用の負担をする必要等ありません。

これが琉球時代の仏教でしたから、当然庶民への布教活動はありません。ですから「沖縄に仏教はなかった(伝わっていなかった)」という答えは、正解とは言い切れないのですが間違いとも言い切れないのです。

日本で一番多い浄土真宗本願寺派は沖縄では最も遅く伝わってきた

日本の仏教で最も多い宗派は浄土真宗本願寺派なのですが、沖縄に浄土真宗本願寺派が伝わったのは明治末頃のこと。実は最も遅いタイミングで沖縄に伝わってきたのです。

沖縄の仏教が変わるきっかけとなったのは「琉球処分」でした。

琉球処分によってそれまで厚遇されてきた官寺を取り巻く環境は一変します。尚家(国王の一族)の私寺となった5寺以外は廃寺とするか私寺となるかの選択を迫られ、給料が支払われないどころか寺の維持さえも自分たちで行わなければならなくなります。

そのため最盛期には最大300名以上いたといわれるお坊さんたちもほとんどが廃業。

ただし琉球処分によって新しい仏教も沖縄に伝わるようになります。

それまで禁教とされていた一向宗のほかにも浄土真宗大谷派や日蓮宗がようやく沖縄での布教を本格的に始めるようになったのです。

新しい宗派ですから、庶民に対する布教活動も自然と熱が入ります。こうしたこともあって少しずつ沖縄に仏教が広まっていきます。

ところがこのタイミングに乗り遅れて布教を始めることになったのが浄土真宗本願寺派。

明治34年に管深明が布教所を開設し、それから10年後の明治44年に現在では沖縄を代表する寺院である大典寺を那覇に建てたのでした。

沖縄の仏教は本土の仏教とは少し違う

紆余曲折合ってようやく沖縄の一般庶民にも広まっていった仏教ですが、問題はそれ以外にもありました。

中でも最も大きなものが「沖縄の伝統的な風習や慣習にどうやって向き合うのか」でした。

そもそも沖縄では先祖崇拝を支える存在として「ユタ」と呼ばれる女性たちがいます。

ユタは神様や死者の霊との交信役を務めており沖縄の民間宗教に欠かせない存在です。ただしユタが語る死後の世界観は仏教のそれとはまったく違います。

さらに沖縄で亡くなった人に豚肉をお供えするという風習は、殺生を禁じている仏教の考え方とは真逆にあります。

つまり仏教の考え方にたって正しく受け止めるのであれば、ユタもお供え物の豚肉もNGになるわけです。

そこで沖縄では同じ仏教の宗派であっても、お坊さんによって判断が「宗派の教えに従いユタや三枚肉を一切拒否する」「沖縄の伝統的な風習を尊重し受け入れる」「YES・NOをはっきりと出したくないのでとりあえず受け入れる」の3つに分かれます。

本土から布教を目的に沖縄にやってきたお坊さんは、基本的に「拒否」します。

ただし沖縄出身のお坊さんのほとんどは「肯定」です。たしかにお坊さんだって食べていかなければいけません。

そもそも檀家制度のない沖縄では、檀家さんからの収入は期待できません。つまり生活していくためにはお葬式や法事などで依頼をしてもらわなければいけないわけです。

ですから沖縄のお坊さんは「仏様の教えを重視する」と「生活のために沖縄の伝統を受け入れる」の二者択一を迫られるわけです。

沖縄のお坊さんは意外と大変

沖縄では琉球王朝時代に仏教が伝わってから庶民に広まるまでに独特な経緯を経てきているため、正直言って宗派が違ってもその違いがほとんどありません。

しかも今では通信教育でお坊さんになれてしまえる時代。お坊さんの数も年を追うごとにどんどん増えています。

ただ俗世から離れ真摯に修行に向き合うその姿を見るからこそ、お布施を渡すにしても「ありがとう」という気持ちが生まれるもの。

もちろん沖縄にだって仏教の教えに従い正しく修行に励むお坊さんもいます。そんな本物のお坊さんがもっとたくさん増えれば「たまにはお寺に行ってみるか」と気軽に足を運ぶ人も増えてくるのかもしれませんね。

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